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”プチ”生活保護のススメ
大田のりこ/著
大山典宏/監修
クラブハウス
2003.8. 初版
\1260

<< 8月15日付の朝日新聞で紹介されました。 >>
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監修者 あとがき より転載

 代表者という形であとがきを書かせていただいていますが、わたしは経験豊かなベテランでもなく、まして研究者でもありません。インターネット上に小さなサイトを持つ、一人の管理人です。

 生活保護に関する相談掲示板(通称、相談掲示板)は、2000年9月に個人サイト「でんぷく」(生活保護110番の前身)に設置されました。2001年10月にサイトをリニューアルして「生活保護110番」に生まれ変わり、延べ相談件数は3000件を超えました。現在も月100件を超える相談がコンスタントに投稿され、回答するケースワーカーのネットワークは150名を数えています。でも、こうなると予想して開設したわけではありません。

 はじめは、「ネットで相談してくるなんてどうせネタだよ」「我ながら物好きだよなあ」といった感覚しかありませんでした。好きではじめた仕事ではないし、対人関係の仕事でストレスは溜まる。人間不信になる。一時期は白髪も増え、体重もずいぶん減りました。増えつづける相談も一人では対応できず、「もう、やめてしまおうか」と思ったことも一度や二度ではありません。

 そんな中、一人、また一人と相談に回答してくれる仲間が増えていきました。こんな酔狂なことをするのが自分だけではないというのは、驚きであり、喜びでもありました。また、丁寧なお礼という形で評価してくれる相談者の存在が、自分を支えてくれました。小さな積み重ねが、少しずつ自分を変えていってくれたのです。

 ケースワーカーは報われることの少ない仕事です。役所の中では汚れ仕事として嫌われ、相談者からはなじられ、マスコミからは冷たい対応と叩かれる。全てを諦め、殻に閉じこもり、燃え尽きてしまうワーカーを他人事だとは思えません。

 しかし、生活保護110番のように「ケースワーカーだからこそできる社会貢献のあり方」があります。貧困が多くの人にとって他人事ではない状況になるにつれ、相談者の多様な要求に応えられる専門性の高いケースワーカーの需要はもっと増えていくでしょう。そして、ワーカーであるわたしたちの立場からも、なぜ、「わたしたちの力」が必要なのかを訴えていかなければなりません。

 この本の著者である大田のりこさんから出版の話をいただいたとき、協力すべきかどうかずいぶん悩みました。この本の随所で触れられているように、制度には多くの問題点があり、それはほとんど解決不可能なほどです。

 しかし、生活保護が最後のセーフティネットとして欠かすことのできない制度であることだけは疑いようがありません。制度疲労を起こしているこの制度を、改めてどうデザインしていくか。多くの人たちに現状を知ってもらうことからしか、制度を変えていくことはできないと思うのです。

 この本が単なる生活保護受給マニュアルではなく、多くの方にとって「国民のセーフティネットとはどういうものか」を考えるきっかけとなってくれることを期待します。

 最後に、監修作業を行うにあたり、ボランティアにもかかわらず協力していただいた生活保護110番の仲間たちに感謝を。ありがとうございました。

平成15年8月

監修・大山典宏(『生活保護110番』)

[2004.08.07]


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プロケースワーカー100の心得
柴田純一
現代書館
1999.03.20 初版
\1800
 仕事上、必要にかられて読んだ本なので、一般にはあんまりお勧めはできない。だいたい、出たばっかりなのに大規模書店の専門書のコーナーにひっそりとしか置かれていない時点で、”必要な人だけどうぞ”という種の本であることは間違いない。
 仕事の範囲はますます広く深く、複雑多岐にわたるのに、職場には業務に関する技術継承もなければ、専門的な業務としての認知もない。それどころか、ほとんどの自治体では忘れられた「3K」職場で予算も乏しく、低い労働条件の割には責任だけはしっかり個人にふりかかる仕組みになっている。この本は唯一ケースワーカーのそんな立場を守り、期せずして配属された福祉事務所新人職員を応援するものである。しかし、自分たちの立場を主張するためには、まず相手の権利を保障する仕組みにも精通しなければならない。そういう複雑な状況の中で、仕事のやり方、考え方を提案し、なりより嫌にならず、落ち込まず、ケースワーカーをやってよかったと思える日々を迎えられるようにこれを利用していただければと思う。(「はじめに」より) ―「プロケースワーカー100の心得」帯裏より
 なんか悲壮な決意をしたためた裏書きである。生活保護の仕事が、なんだかトンでもなく厳しいものであるみたいである。じっさい現場に身をおいてみると、そうでもないんだけど、この本だけ読んでケースワーカーになろうという人は、まあいないんじゃないかと思う。

 「はじめに」でも言っている通り、”期せずして配属された福祉事務所新人職員を応援するためのもの”なので、別にこれでも構わないんだけど。わたしなんかは、まさにそのクチな訳であるし。肝心の内容なんだけど、さすが現場人!と感心することしかりである。現場の仕事の流れを踏まえた上で、どのような点に注意して仕事を進めていくべきか、個別具体的に、きっちりと書かれている。もちろん、作者の考え方なども随所に書かれてはいるのだけど、決してそれが主ではなく、マニュアルとしての役割を十分に果たしている。現場に精通していなければこういった本は書けない。

 まあ、現場に身を置くものでなければ、こういう本はいらないだろうとも言えるのだろうけど。なんにしても、もう少し時間が経って、仕事を覚えてから再読したい本である。欄外の記述や、厚生省の監察なんかはまだまだ読んでも分からない部分が多いし、仕事を覚えればもっともっと学べる内容が詰まっていそうである。ありそうでない、良質な手引書として、関係者は是非。

[1999.05.08]


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生活と福祉[臨時増刊号]第512号
福祉事務所ソーシャルワーカー必携
生活保護における社会福祉実践
岡部卓
全国社会福祉協議会
1998.01.17初版
\840

 福祉事務所におけるソーシャルワーカーの仕事とはどのようなものなのかを懇切丁寧に解説したものである。上司から、”これ読んどくように”と渡されたもんである。Profileには職業はケースワーカーと書いているけれど、ソーシャルワーカーとケースワーカーは同じものである。他に現業員という呼び方もあるが、あんまりメジャーではない。この感想ではソーシャルワーカーと書くけれど、わたしのSiteの基本的な呼称はケースワーカーにしておく。うちの職場がそうだからというだけで、特に理由はない。

 本書は大きく、理論篇と実践篇に分かれていて、生活保護の歴史的背景、趣旨、仕事の進め方の手順、ケースとの対応で注意すべきことなどが書かれている。こう書いてしまうと、まるでどこぞの教科書みたいだけど、現場で経験を積んできた作者の手によって、非常に分かりやすい手引書となっている。この種の知識がある人にとってみれば物足りない内容なのかもしれないけれど、まったくど素人のわたしみたいなものにはとてもありがたい。

 とはいえ、やはり見所は実践篇だろう。たぶん、生活保護という仕事にまったく関係がない人にとっても、それなりに興味深い内容になっていると思う。生活保護のケースの代表的な例をあげて、その援助の方法について述べているのだけど、下記のような内容になっている。

第一節 アルコール依存症世帯への援助
第二節 精神障害者世帯への援助
第三節 知的障害者世帯への援助
第四節 身体障害者世帯への援助
第五節 ひとり親世帯への援助
第六節 高齢者世帯への援助

 どうでしょう?なかなかに興味をそそる内容ではないかの?(わたしだけか)

 たとえば、精神障害と知的障害の違いというのは普通の人はわかるだろうか。うつ病や精神分裂症といったものが前者、言語障害、知恵遅れといったものが後者、それぞれに対して、違った対応で援助を進めていかなきゃならない。もちろん、経験を積まなけりゃどうしようもないんだけど、こういう羅針盤のような働きをする本の存在はありがたい。読みやすいしね。

[1999.04.17]



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