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生活保護は足りない部分を保障する

 生活保護は「国で定める最低生活費を下回る場合に、足りない部分について保障する」制度です。仕事の給与、年金、各種福祉手当、仕送などを合計して、なお最低生活費に満たない場合に、その足りない部分がお金(保護費)として支給されます。

 説明には、下の図がよく使われます。収入(青)が最低生活費(赤)に届かないときは、足りないところを保護費(黄色)として出しますよ、ということです。収入が最低生活費を超えるときは、保護費を支給する必要がないため、生活保護は適用とはなりません。


最低生活費の考え方(図示)


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どういったときに適用になるのか?

 生活保護は世帯を単位として適用されます。ですから、世帯全体の収入を合計して、最低生活費を上回るときは適用されません。借金がたくさんあって生活ができない、父親が酒ばかり飲んで家に金を入れないといったケースでは、保護は認められないことになります。こういった場合には自己破産や協議離婚など、別の方法で世帯への援助を図っていくことになります。

 最低生活費の計算方法は別のフラグで、また、ケース例でも取り上げていますので参考にしてください。

 最低生活費を計算して、世帯の総収入が下回る場合には、保護が適用される可能性があります。どういったケースで、適用になるのでしょうか?


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できることはやってもらわんと、適用はできまへん


 まず知っておいて欲しいのは「補足性の原理」です。条文を読んでわかるとおり、生活保護は「自分でできることはすべてやった上で、それでも生活の目処が立たないときに、はじめて適用になりますよ」という意味です。逆にいえば、「できることはやってもらわんと、適用はできまへん」という意味でもあります。

 原理というのは他に3つあって、「国家責任」「無差別平等」「最低生活の保障」とありますが、申請の場面では、外国人(これは後述)以外はそれほど意識する必要はありません。なぜなら、これらは「保護の適用を行う側=役所」に課せられた条件だから。いっぽうで、「補足性の原理」だけは保護を受ける人に対して課せられた条件。ですから、条件を満たしているのかを確認する必要があります。

 保護の申請にあたっては、「補足性の原理」を満たしているかが問われます。内容は多岐に渡りますが、目的は補足性の原理を満たしているかどうか、すなわち、「できることはすべてやった上で、相談に来ているのかどうか」を確認することです。


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できることは人それぞれ違う

 一人ひとりできることは異なります。健康な若者と病気の高齢者を同列に論じることはできません。乳飲み子を抱えたシングルマザーと、旦那のいる専業主婦を一緒に考えることもできません。ですから、その人が「何ができるか」は相談を聞きながら、個別に判断していくことになります。

 判断と基準となるものは、生活保護法と法を実施するために作成された「実施要領」。これに県の解釈や通知などが加えられ、かなり詳細に条件が定められています。たとえば、こんなもの。

 詳細は「生活保護Q&A」に譲るとして、自分でできる努力をしてもらう。具体的に見ていきます。


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働ける人には働いてもらう


 働かざるもの食うべからず、ではありません。働ける人は働いてもらう、です。病気や高齢が原因で働けない人にまで、「働くこと」を条件にすることはありません。

 ただ、「働ける」という判断が微妙な例もあります。たとえば、軽度のうつ病や生まれたばかりの子供をかかえた母子家庭のお母さんなど。60歳を超えてリストラされた人が新しい仕事を見つけるのも容易なことではありません。こういった微妙な判断は一律的に決められるものではなく、個別に生活状況等をうかがいながら福祉事務所が判断していきます。

 なお、「専業主婦で今まで働いたことがないから、仕事は無理」「今は無名だけど将来は高名なアーティストになる予定」といった理由では、保護の適用は認められません。あくまで、身体状況や生活状況、社会情勢等により、客観的にやむを得ないと認められる場合に限られます。


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資産価値のあるものは処分してもらう


 有名なのは自家用車ですが、保有はまず認められません。また、生命保険についても、原則として解約する必要があります。ただし、いずれも例外がありますから、かならず事前に相談してみてください。

 持家はローンが残っているときは処分する必要があります。すでにローン返済が終わっている場合には、資産価値を見ながら相談していくことになります。

 パソコンの保有については明確な指標(厚生労働省からの通知など)がなく、福祉事務所が個別的に判断しているのが現状です。

 なお、手持金や預貯金は、合計で数万円程度しか保有は認められません。これ以上の手持金がある時は、生活費等に消費してから申請を受け付けることになります。


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援助できる身内がいればその人に援助を求めてもらう


 三親等内の親族には扶養義務が発生します。通常は、「親兄弟子供」が扶養の範囲に入ると考えてください。

 「あの人に援助してもらうのは嫌だ」というのは認められません。「別れた旦那に頭を下げてまで、養育費なんてもらいたくない」といった気持ちも、個人としては理解できなくもありません。ただ、法律に基づいて保護を決定する以上、きちんと手続きを踏まなければならないのも事実。よく考えて、どうするのかを決めてください。

 生活保護の申請後、通常は扶養義務者に「扶養照会」と呼ばれる手紙が送付されます。対象となる人には、かならず事前に連絡するようにしてください。いきなり福祉事務所から書類が送られてくると、普通の人は驚きます。


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利用できる制度があれば利用してもらう


 「他法他施策の原則」と呼ばれています。高齢者なら年金や介護保険、母子家庭なら児童扶養手当・児童手当、失業中なら失業保険など。どんな制度が対象になるのかは、生活保護の相談にいくと教えてくれます。


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できること、やるべきことはすべてやった


 できることはすべてやったけど、生活の目処が立たない。上記に述べたようなことも、全部やった。そう思って福祉事務所に行っても、厳しいチェックが入り、「そんなことまで」と思われるかもしれません。

 生活保護は他の行政サービスとは異なり、適用の条件が生活の全般に渡り、かなりプライバシーに踏み込んだ形でインテーク(初回の面接のこと)が行われます。問題をきちんと整理し、「なにが問題となっているのか」を、きちんと相談担当者に伝えるようにしてください。


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